百年名家

―人々の営みを支えてきた家屋には、暮らしを彩る様々な工夫があります。そして、そこには人々が受け継いできた物語があります。その古き良き日本の文化に触れ、未来に繋ぐ「暮らしのヒント」を探します(抜粋)―

 これはBS朝日より毎週日曜日の正午から放送されている「百年名家」の番組解説である。実は9月29日(火)の午後、当記念館がこの撮影取材先となった。

 出演者は旅人として俳優・タレントの八嶋智人(ヤシマノリト)さんと女優の牧瀬里穂(マキセリホ)さん。案内人として足利工業大学建築学科准教授(工学博士・一級建築士)の渡邉美樹(ワタナベミキ)先生だった。カメラ等撮影関係スタッフは15名ほどだったか。

 私と家内が取材に応じる形式だったが旅人、案内人、スタッフの皆さんに助けられて何とか無事に終了する事ができた。自然体とは言えノー原稿で場当たりに説明していた私なので、あとは編集者の腕にすがるしかないと思っている。

 ディレクタ―、プロデューサーの方々、くれぐれもよろしくお願いします。取材、誠にありがとうございました。

 それにしても久し振りに映画、テレビ等の第一線で活躍する芸能人と3時間近く交わったが、さすがにプロとの印象を強く受け、刺激をもらった。表現、笑顔、ジョークなど頭の回転が実にいい。プロのプロたる所以か。

 「百年名家」の放送は5年続いているとの事だが、これは珍しいそうである。視聴率が比較的良いのかな―。スポンサーは古民家再生と森林に情熱を燃やす住友林業(株)で、スケールに格段の違いこそあれ同社のスタンスは私と同様である。

2015年9月

稲穂

お盆

hozuki201508 例年通り当然、お盆の墓参りをした。8月13日は迎え盆、16日は送り盆―と。お盆は祖先の霊を供養する行事、祖先の霊が子孫の元へ帰ると、何となく認識している。仏壇の周りはホオズキやビャクダンの枝葉などで飾り、行燈を照らした。年々、線香をあげる回数が増加傾向にある。
 第2次世界大戦終戦記念日はお盆期間中の15日であり、特に今年は戦後70年の節目の年でもある。なぜか今回はお盆が終了しても先祖の事を想い、今後の我が家の事もじっくり考えたりして余韻が残った。
 市や県の歴史書の中には「名主、糸商、地主、多額納税者、村長、鉄道・銀行・ガス事業への参画―」等々、代々半兵衛の名前が記録されている。敗戦後の財産税(国税)の納税や農地改革で資産の大半を失った父・義雄も市助役など公職を務め、公共の福祉のため貢献した。
 我が家の言わば全盛期に整備・建造された墓と現在の住宅(記念館)。いずれも当分、頑丈で壊れそうにない。しかし、これをありがたいと思う反面、正直なところ、私の能力では重荷と感じる事もしばしばだった。
 数年前、(株)電通の局長、(株)電通総研の役員を務めた兄から「戦後、旧家の大半が姿を消してきた中、松村のプレゼンテーションを高め、良くぞここまで生家を残してくれた。ありがとう。これからは夫婦で楽しむ余生を送れー」と、激励を受けた事がある。嬉しかった。涙がこぼれ落ちた。社会をワイドに見てきた兄ならではの含蓄のある言葉だった。
 振り返ると父や母は、息子たちすべてに後継ぎを強制しなかった。
 「時代は変わった。自分の好きな道へ。東京にいようが外国にいようが松村に変わりはない。誰も帰って来なかったら、山林や自宅の整理、縮小を行う」と、父は口にしていた。兄たちは早大教授や電通役員へ―。実は私も大学卒業後の進路はスポーツ卓球の関係から当時、全日本実業団の雄だったシチズン時計か旺文社へと向かっていた。もちろん私にも父や母は後継ぎを強制しなかった。この件で兄たちと多少のやり取りはしたが結局、自身の判断で足利へ戻ったのである。これに父や母は拒む事もしなかった。多分「自分らしい主体的人生を歩め」「菊根分け あとは自分の土で咲け」が両親の教えだったかもしれない。
 何の能力も持たずに何とか歩んできた私、69年。不器用にも選んだ道をなおひたすら歩もうとしている自身が正しいか誤っているか、分からない。優しくて気丈な父と母は今や遠く無言だ。私がせめて将来、「有終の美」を飾る事が両親や先祖への感謝の証と肝に銘じ、さらにゆっくり深く生きて行きたいと思っている。

2015年8月

・梅雨が明けてからは異常とも言える猛暑の日が続いた。毎年の事になると異常とも言えなくなるだろう。40度が常温になったら一体、どうしようか―と。人間、クーラー付けになったら大変。
・この夏の当記念館は「古民家そのままスタジオ」として、スチル撮影を目的とした、多くの若者に利用された。私ども夫婦も若返り。
・ゲストハウス松香庵はまずまずの稼働。若者にサイクリング・ツーリング愛好者が予想以上に多い事を肌で感じた。
・研究を重ねていた森林・木材の活用について、ついに具体的動きに入った。良きパートナーを得てーとの想いが現実化しそうにある。夢は想えば叶う―か。
・錦織ATPテニス、ゴルフの全英・全米、甲子園高校野球、ワールドカップ女子バレーボール、世界陸上北京大会等、テレビのスポーツ観戦で忙しい(笑)日々を過ごす中、つれづれ月報を忘れていた。反省―。

2015年7月

緑陰